さよなら、お酒
わたしは酒というものが好きだった。
飲みの場が好きだった。
あの陽気な空気が好きだった。
味が好きだった。
日本酒の、すごくきれいな水を飲むような甘さが好きだった。
濃いビールの少し気の抜けたような炭酸具合が好きだった。
黒ビールとチョコレートの組み合わせが好きだった。
だけど、今は飲めない。
2年前に訪れたインドで赤痢にかかり、そこからアルコール耐性が一気になくなったのだ。
もともと強い方ではなかった。
しかし、当時クラフトビールの専門店で働いていたので、人並みには飲めるようになっていたのだ。
それが赤痢菌によって、一気にパーである。
ビール一杯で泥酔。
二杯目で嘔吐。
先日、救急車で運ばれるという失態までおかしてしまった。
もう、熱くのどを通る、芋焼酎のロックを楽しむことも出来ない。
ただ味覚というものは不思議なもので、気がつけばどんどんお酒をおいしいと思わなくなっていってるのだ。
ビールの苦みを嫌なものだと認識し始めた昨日、ついに終わりなんだと思った。
わたしとお酒の関係が切れるとき。
さよなら、お酒。